トップ > メディア

メディア掲載

祝!神奈川建築コンクール最優秀賞 受賞

選評

第63回神奈川建築コンクール住宅部門最優秀作品選評
「ミキハウス」

細やかな思いやりと想像力に満ちた、考え抜かれた自然体の家である。建築家が自分と家族のために、2年間敷地のそばに住み込んでデザインを練ったという自邸には、豊かで多様な生活の「場」が創造されていて、審査書類で見るよりずっと豊かな印象を受けた。
既存の雛壇造成地に建てられた、この住宅には3つの「つながり」のデザイン手法が認められる。
「つながり」のデザイン手法の一つは、既存雛壇造成地の敷地の扱いである。前面道路側の擁壁上部の間知石をはつるという減築によって、通りと敷地内の目線を繋げる工夫を施した。駐車スペースは、建物の前面に配され、そのまま建物に沿ったアプローチの一部を構成する。さらに、設計者は道路面から敷地奥に至る1500㎜の高低差を生かして、土地なりの床高で室内を構成した。段状の床で構成される平面構成は、景観でも周囲との良いつながりをもたらしている。この「段床」による空間構成が、「つながり」のデザイン手法の二つ目である。道路側の一番低い「アトリエ段床」から最奥の畳敷きの「室」に至る11m程の長いワンルーム空間が4つの段床で構成される。床レベルと距離の組み合わせが個々の段床にできる空間のボリュームを決定し、生起する個々の「場」の柔らかなつながり作りに貢献する。上階部分でも同様の手法が生かされていて、1,2階の各段床は道路や庭、そしてテラスへと直接の繋がりを持ち、生活の場が豊かに広がっていた。
そして、この家の真骨頂は窓の「計画」にある。全ての窓の位置や大きさは、隣家との関係性や景色、道行く人の視線等に関する丁寧なスタディから決定された。専用住宅地の計画では、『単純に周囲に開け広げた建ち方ではなく、適切な開き方と距離感を持つ』ことがマナーであるとする設計者の言葉は、今日の社会への提言として受け取るべき価値がある。自分だけではなく他者を思いやるという、ごくあたりまえのことがもたらす効果は持続可能なまちづくりにも波及するはずだ。
本作品が言外に提言する雛壇造成地における「つながり」のデザイン手法は、自然豊かで起伏に富んだ地形を特徴とする神奈川県の住まい環境の質の向上に資する、優れた社会性を有する手法として最大限の賛辞に値する。

審査委 員古賀紀江

株式会社MMAAA 一級建築士事務所より受賞のコメント

神奈川建築コンクール最優秀賞 ミキハウス

自邸という特別な思い入れのある建築でこのような賞をいただきとても嬉しく思います。これもいい建築をつくりたいという私の思いに賛同し快く施工を請けてくださった村上建設さんのおかげだと感謝しています。現場では監督の谷中さんや職人さんたちに設計の意図を伝え、それに対し施工方法や納まりなどを私も教わりながら、ディテールまでこだわってつくることができました。その結果がこの建築の随所に現れており評価につながったのだと思います。
この家で暮らし始めて、今は家族と家で過ごすことが何より楽しい時間になりました。今回の受賞を励みにし、これからより良い住宅を手掛けていきたいと思います。

株式会社MMAAA一級建築士事務所
三木達郎

Tel :050 3550 4321
miki@mmaaa.jp

私たち村上建設社員一同に大変名誉な勲章をまた一つ頂くことができました。
そもそもこのプロジェクトのお話を頂いたのは昨年のこと、初めてお会いしてお話をしたところ、ほぼ即決に近い形で村上建設でと言っていただけたことは、大変光栄であり幸せなことでした。今年四月に完成したばかりの『ミキハウス』のオーナーは元々都内に設計事務所を構える方で、今回は自分とその家族が生活する自邸であり、自分自身がその設計者でもあるという、別の意味で大変気合の入る物件であったのではないかと思います。建築地として選んだ土地は全面道路から数メートル上にあり既存のコンクリート擁壁が設置されていた為、駐車場の確保など問題点が幾つかありました。そこを高低差のある土地に逆らわず、敢えて弱点と思われる条件を取り込んだ発想には頭が下がります。内部の生活導線はスキップフロアの様にいくつもの階段や段差にて構成されています。一見すると移動が面倒では、と思われがちですが各平面の絶妙な構成により以外にも生活しやすく、何よりもとても楽しい住まいになりました。
村上建設の何時ものテイストとは全く違う間取りの取り方、そして意匠や仕上げなど大変新鮮な感動を頂いたような気がしています。オーナーであり建築家の三木さん曰く、これから先は出来る限り地元に近いエリアで住まいを中心にした設計をしていきたいと考えられているそうです。今ではまた機会があれば是非ご一緒したい建築家のお1人です。

(株)村上建設 代表取締役  村上 敬