第65回神奈川県建築コンクール住宅部門優秀賞
『真鶴の改築住宅とアトリエ』
ふるまいのマニュスクリプト
陶芸家の西川さんご夫妻は20年程前に遠くに真鶴湾を望むこの土地に移住してきました。購入した中古住宅は斜面に半分が埋まる RC 造の地下、その上に載る木造2階建てでした。子供たちが家を離れることを機に、アトリエとして利用している地下躯体を残して上屋を建て替えることになり、我々は既存躯体調査の段階から設計に関わる事になりました。 村上建設さんを通じて西川さんを紹介いただきましたが、お話してみると建築や美術への興味関心が近く共通の知人もいてすぐに意気投合しました。打合せを重ねる中で、長らくこの場所で創作活動を行い、生活もしている2人にはルーティン化したふるまいが染み付いていて、今回の私たちの設計は、それらをよく観察し、新しい建物として写すこと(マニュスクリプト)であると感じました。結果として東西に長いボリュームを長手に分節し、私的な場所をまとめた2層の主屋と、ギャラリー(玄関)ホール(リビング)を内包する下屋の構成が導かれています。 大谷石の床と外壁と同じ左官で仕上げられた壁に囲まれた広い土間はいちおう玄関ですが、自分たちや仲間の作品を展示するためのギャラリーを想定しています。下屋を覆う片流れの屋根でギャラリーから連続するホールは日常的には2人の日常のスペース(リビング)ですが、同時に多くの来客を饗す場です。季節がよい時節は下屋の建具は全て袖に引き込まれ、建物周辺の緑や風景を存分に享受できる空間となっています。 設計から竣工まで約2年かかった長いプロジェクトでしたが、村上建設さん、西川さんとの楽しい対話の時間を過ごし良い建築ができたと思います。
一昨年の最優秀賞の受賞以来、2年ぶりの受賞を頂き、驚きと嬉しさで胸が一杯です。 今回の建て主様はご夫婦ともに陶芸家という、異色のお二人からのご依頼でした。 お話を頂いた当初より設計監理を入れるべきと考え、前回最優秀賞を頂いた時の施主でありパートナーであったММAAAの三木さんにオファーをし、建て主様のご快諾を頂戴し、プロジェクトチームが出来ました。既存の住まいが建っていたため、お引越しをしていただき、RC造の地下を残して解体し、2階建ての住まいを再建築する計画でスタートしました。 時はコロナ過ということもあり、建築資材の不足並びに高騰と、建て主様にとっては決して良い時期ではありませんでしたが、3者密な打合せとコミュニケーションを重ね現在の住まいの原型が完成しました。施工中も自然災害や様々な困難な課題が出てまいりましたが、設計監理の三木さんをはじめ、建て主様の大きく優しさ溢れる心遣いに助けられました。 工期は大幅に遅れてしまいましたが、決して無理を強いられることがなかった為、丁寧な施工を続けるよう心がけました。 同じ建築家とのコラボ事業は見事無事に完成し、新たな名誉ある称号を頂く結果となりこのプロジェクトにかかわった全ての方々に、改めて心からの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。 皆さん、本当にありがとうございました。